サヨナラバス
私はバスに乗った
私以外は誰も乗っていなかった
私はこのバスに何処にも行かないで欲しいと思った
この空間を独り占めしたかった
私がバスを降りればこの空間も無くなると言うのに、だ
どぶ川のきらめきが僕にとって唯一綺麗な想い出でした。
私はバスに乗った
私以外は誰も乗っていなかった
私はこのバスに何処にも行かないで欲しいと思った
この空間を独り占めしたかった
私がバスを降りればこの空間も無くなると言うのに、だ
「愛美ちゃんは何が食べたいの?」
「愛美ね!赤くて黄色いものが食べたい!」
「愛美ちゃんはご飯ちゃんと食べた?」
「うん、愛美ちゃんをご飯にしてちゃんと食べたよ!」
愛故に愛美
今ほど白痴に為りたいと思った事は無い
今ほど独りに為りたいと思った事は無い
声が聞こえる声が聞こえる
私が病人だからと言って真実ではない私を
世界に広めた所で私が病人であるが故に
それが真実となってしまうのだから
それは私が悪いのでも貴方が悪いのでもない
悪いのは私の病気なのか?
ならば貴方も病気だろう
真実は何も知らない事が一番だ
こんな朝早くに子供の泣き声が脳内を汚す
難しい事等は私の人生には無かった
簡単な事等は私の人生には無かった
中途半端に揺蕩う事だけが私の人生
それは楽に見えてタイトロープの上
バランスを失う前にすべてを失うのだ
何を奪われても何を失くしても
泣いてはいけない、笑ってもいけないのだ
本当の事は本当だから私は嫌いだ
嘘は本当かも知れないので私は好きだ
相反する二つの事柄を神コップに入れ
混ぜて飲むのが現代社会で言う”癒し”
アウフヘーベンの塊でしかない1985年生
薬の粒が転がっていった
戦車が恋人を轢いた
味噌汁を沸騰させた
子供の生首があった
すべて本当の事なので私は嫌いだ
眼ん玉を寝違えた
寝返りを打とうとぐるりと頭を回転させた所
眼ん玉がぐりぐりと変な方向へ回転し眼が痛い
眼球が斜めに成ってしまっている
ロート製薬のお世話にでも成らなければいけないのか
この失態は私の視線、斜め45度を見ながら
何度も悔やまなければいけない事なのだ
彎曲した思考の果てに私は飛び跳ねるのだ
其れは意味など無い非常に意味の在る事
飛び跳ねながら発する「あーあー」と謂う声は
私の虚栄心の現れなのだ
疲れたら休めばいい
そして再び飛び跳ねればいい
永遠に其れを繰り返せばいい
何処からでもリフレインは聞こえる
社会には私と同じ境遇の人が多いのだ
脳内から電波が出ているせいか
クーラーをリモコンを使わず消せた
何時までも電波人気取りを
しているのもどうかと思うので
私は今日から電波を遮断する
電波を遮断すれば人の心などわからないし
人の言葉の意味もわからない
白痴になれる
白痴は何て幸せなんだろう
悲しむ事も怒る事も笑う事も忘れ
唯、年月の過ぎるのを忘れながら過ごす生活
何も解らなくなりたい
何も知りたくない
何にも為りたくない
白痴の様に世界が自分で自分が世界でいたい
私の体は此処に生まれた
私の心は何処かで生まれた
未だに対面していない
春の匂いがするジャンパーを
押入れから引張り出して見た所
心は其れを着ていた
私は寂しいと思った
貴方には愚か心にすら対面していない
誰が何処に居るかなどわからない
世界では60億人が60億箇所で
60億の事をしている
私は孤独だった
売れ残りのフランクフルトは廃棄される
それはアウシュビッツの様に
深淵にへばりつく蜥蜴の眼差しは
夜の月の遥か彼方を眺めている
都会の真ん中の深淵
其処は何処にも無い
只、暗がりに薄明かりが薄ら笑いを
テーブルの上には燭台を
其れも只の薄ら笑いの光
蜥蜴の見つめたい物は鳥目でしか
見れない様な暗がりの中
遥か彼方の星空に在る物は
コップ一杯の苦いコーヒー